ブリテン「戦争レクイエム」を聴いてきました
2月23日に新宿文化センターで20世紀英国を代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンの「戦争レクイエム」を聴いてきました。第2次世界大戦中にドイツ軍の空爆で破壊された英国コヴェントリーの大聖堂が戦後再建され、1962年の完成式典のために作曲されたのがこの「戦争レクイエム」です。
通常のレクイエム(鎮魂ミサ曲)は、死者の天国での安息を祈願するラテン語による典礼文を歌詞にしたものですが、ブリテンはそれに第一次世界対戦時の英国の戦争詩人(War Poet)ウィルフレッド・オーエンの英語現代詩を新たに組み込み、単なる宗教音楽にとどまることのない壮大な音楽作品を創り上げました。
戦争の悲惨と反戦を訴えかけるピカソの「ゲルニカ」と並び称される本作は、同時にミサ曲らしく戦争の被害者たちの魂の救済を願い、敵対し戦死した兵士たちの死後の和解と安息を祈り求めます。
ラテン語典礼文の部分がソプラノ独唱と合唱によって大編成オーケストラと共に演奏され、オーエンの英語詩の部分がテノールとバリトン二人の独唱者と小編成のオーケストラによって演奏されるという文字通りポリフォニックで壮大な作品です。
「戦争レクイエム」の最終部を聴くと、古代ギリシアのアテナイでの市民同士、身内同士が骨肉相食む凄惨な内戦を終結する際に「過去の不幸、悪しき出来事を思い出してはならない」という記憶の禁止が誓われ、それが後に「アムネスティ」(恩赦、大赦)と呼ばれるようになったことを思い出さずにはいられません。和解とは、戦争における悪夢のような記憶を敵味方の双方が意図的に禁止することによってしか得られないのかしれません。しかし、果たしてそんなことが可能なのでしょうか。
本作の最後で、敵味方として殺し合い戦死した二人の兵士(死者)の一方が他方にこう呼びかけます。「私はお前が殺した敵なのだ、友よ、さあ共に眠りにつこう」と。そして最後は合唱による「アーメン」によって曲は閉じられます。深く余韻の残る演奏でした。
